プロレスのミドコロ

プロレス大好きな管理者が、プロレスのミドコロを丁寧に解説

丸藤正道の覚悟

丸藤正道。NOAHという団体でずっと活躍しているレスラーであり、

華麗な空中殺法からレスリングまで、何でもこなす「天才」。

若いころからその実力を評価され、団体を引っ張ってきた、名実ともにNOAHを代表する選手です。

少し前に「清宮ゾンビの快進撃」という記事を書きその中でも触れましたが、

現在のチャンピオン清宮海斗選手に、3.10丸藤選手が挑戦します。

今回は丸藤選手の側から、この戦いに迫ってみたいと思います。

 苦難の道

NOAHという団体は、故三沢光晴選手が中心となって立ち上げた団体です。三沢選手は有名だったので知っている方も多いと思います。そのネームバリュー、そして魅力的な試合を連発することで、NOAHは一時期「プロレス業界の盟主」とまで言われていました。

しかし、三沢選手は試合中の不慮の事故で亡くなってしまいます。

それからのNOAHは、中心選手の引退・大量離脱などがあり、魅力が薄れ、一時期の勢いをなくしてしまいました。

そんな中でも、常に団体の中心に立ち、引っ張っていたのが丸藤選手でした。

他団体との戦いで放つ光

丸藤選手は、団体の最高峰のベルトである「GHCヘビー級」のベルトを何度も戴冠しています。しかし前述したように、三沢選手が亡くなってからは、団体内でどれだけ良い勝負を展開しても、団体の人気がなかなか回復しない。実際に地上波のTV中継もなくなってしまったため、自然と目に触れる機会も減っていったように思います。

 

丸藤選手は、積極的に他団体に出撃するようになります。

新日本プロレス全日本プロレスDDT、W-1・・・

元々実力は確かな選手です。他団体の主力選手と戦っても引けを取らない試合運びで、時にはその団体のチャンピオンに勝ってしまうことさえありました。

そして不思議なことに(皮肉なことに)、他団体と行う丸藤選手の試合は高評価を受けます。また試合後に出すコメントも見事な外敵っぷりで、憎たらしいくらい冴えまくっていました。

 

他団体に出撃することで、丸藤正道というレスラーを知ってもらうこと、自分に引き付けたファンをNOAHに持ち帰ること、他団体の経営の在り方を参考にすること、NOAHの若い選手の売り込み・・・

様々な理由はあったでしょうが、丸藤選手は他団体に積極的に打って出ることでNOAHの現状を変えようと、必死に試合をしているように見えました。

丸藤正道20周年⇒戦うはずだった相手

昨年は、丸藤選手がレスラーとして20周年の記念の年でした。

これまでの集大成と言わんばかりに、全力で駆け抜けます

・団体内ではタッグのベルトを何度も防衛。

全日本プロレスのヘビー級リーグ戦に出撃して優勝。その後チャンピオンベルトに挑戦。

・20周年記念大会のプロモーション。

・永遠のライバルKENTA選手とのシングルマッチ

もっとあるのですが、これくらいにしておきます。

 

 

そして10月からヘビー級の覇者を決める「グローバルリーグ戦」が始まりました。

丸藤選手は昨年前半に試合を詰め込みすぎたからか、満身創痍の身体でリーグ戦に臨みましたが、何とか自身のブロックを勝ち抜きました。

反対のリーグを勝ち抜いたのは、清宮海斗選手。

リーグ戦の決勝で二人は戦う予定でした。

しかし、決勝前に丸藤選手にドクターストップがかかってしまいます。

 

丸藤選手が決勝に出られなくなったため、次点の選手を決め決勝戦が行われましたが、勝ったのは清宮選手。

清宮選手はその勢いのまま、当時のチャンピオンであった「杉浦貴選手」に挑戦・勝利し、見事チャンピオンとなります。

その試合を実況席で解説していたのが、ケガで欠場中の丸藤選手でした。

NOAHの未来に向けて

その後、清宮選手は2度の防衛戦をクリアしましたが、そこに現れたのがケガから復帰した丸藤選手でした。

リーグ戦の決勝で戦えなかった相手、リーグ戦優勝の勢いのままチャンピオンまで上り詰めた相手。

「自分があの時決勝に出ていれば・・・」という思いはもちろんあるでしょうが、少し別の角度から丸藤選手の感情に迫りたいと思います。

 

この戦いの前に丸藤選手は「他団体への出撃をやめて、団体内に集中する」という趣旨の発言をしています。

途中で触れたように、

自身が光り輝ける場所であった他団体に上がることに、一区切りつけることの意味

NOAHのためを思って行ってきた、他団体出撃を行わないことの意味

そこに、清宮海斗選手の存在があるような気がします。

 

現在、NOAHにはたくさんの選手が上がっていますが、他の団体で育ち途中からNOAHの所属となった「移籍組」が多くの割合を占めます。

そしてヘビー級の人材は乏しく、丸藤選手も100㎏未満の身体ながらヘビー級の戦いに身を投じています。

そんな中で現れた、NOAHの生え抜きチャンピオンが清宮海斗選手。しかも22歳と若く、NOAHの未来を背負って立つレスラーです。

「ようやく後継者が現れた」

そんな丸藤選手の想いが隠されているような気がしてなりません。

 

普通、チャンピオンシップの戦いは、チャレンジャーの方が何も失うものはなく、チャンピオンの方が負けた時に失うものは大きいとされています。

しかし今回の戦いの重みは、チャレンジャーである丸藤選手の方に比重がかかっています。

「強さを感じない」「勢いだけ」とバカにした相手に負けてしまえば、自分はそれ以下。また敗北すれば、確実に若手世代の波に飲まれることになり、しばらくチャンピオンシップの機会も訪れないでしょう。

それでもチャレンジする意味。

これから団体を背負って立つ「後継者」に、試合の中でこれまでのNOAHの歴史や重みを伝えてゆく、そのための試合であるような気がします。

そこにあるのは丸藤選手の「覚悟」

 

若さに飲み込まれるかもしれない。

それでも丸藤選手が試合の中で見せる「覚悟」を感じたいと思います。